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沖縄・辺野古で進む「既成事実化」 3割近く陸地化というけど、軟弱地盤で必要土砂の8% ー 反対派は徹底抗戦へ

沖縄・辺野古で進む「既成事実化」 3割近く陸地化というけど、軟弱地盤で必要土砂の8% ー 反対派は徹底抗戦へ

2022年1月11日 06時00分

沖縄県の米軍基地(宜野湾市の米軍普天間飛行場 2019年撮影)

 米軍普天間ふてんま飛行場(沖縄県宜野湾ぎのわん市)の移設に伴う名護市辺野古へのこの新基地建設で、政府が沿岸部への土砂投入を始めてから3年。工事区域の大部分を占める北側で軟弱地盤が見つかり、完工が見通せていないにもかかわらず、既に埋め立て予定海域の3割近くを陸地化させた。建設に反対する市民らは「政府は陸地化の先行で新基地を既成事実化し、県民を諦めさせようとしている」と警戒。土砂投入量は計画の8%程度にとどまっているとして、反対運動を緩めるべきでないと訴える。(村上一樹)

◆軟弱地盤で難航、完成時期30年代にずれ込み

 「国はあらゆる手段で埋め立てを進めようとするだろうが、横暴に負けてはいけない」。新基地阻止を掲げる沖縄県の玉城デニー知事は昨年12月、辺野古の米軍基地前で開かれた反対派の集会で語気を強めた。

 政府が計画する埋め立て海域は全体で約152ヘクタール。防衛省によると、辺野古崎の南側約41ヘクタールの陸地化が完了し、現在はかさ上げ工事を実施中。埋め立て済みの面積は全体の約27%に当たり、岸田文雄首相らは「辺野古移設が唯一の解決策だ。着実に進めていく」と繰り返す。

 一方、土砂投入量は昨年11月末時点で、全体の2020万立方メートルのうち約8.6%の174万立方メートルにすぎない。まだ着手していない辺野古崎北側の約66ヘクタールの軟弱地盤では、土壌改良に大量の土砂が必要になり、工事の難航も見込まれる。完成時期も当初の「2022年度またはその後」から、30年代へと大幅にずれ込んだ。

◆法廷闘争ならさらなる長期化も

 軟弱地盤を巡っては、改良工事のため計画の変更を申請した政府と、調査が不十分だとして承認しなかった県が対立。防衛省は行政不服審査法に基づく不服審査請求を国土交通相に申し立てて対抗した。最終的に法廷闘争となる可能性が高く、決着までは北側の埋め立て作業はできないことから、さらなる工事の長期化は避けられない見通しだ。

 玉城氏は「軟弱地盤があると分かっていたのに、見切り発車で始まった不法な埋め立てだ」と政府を批判。新基地の反対運動を続ける市民団体「沖縄平和市民連絡会」の城間勝事務局長(76)は、軟弱地盤以外で陸地化を急ぐ政府のやり方に関して「工事が進んでいることを既成事実化し、県民の諦めを誘うための印象操作だ」と主張する。

沖縄関係費の大減額は国からの揺さぶりか

 沖縄県では今年、16日告示、23日投開票の名護市長選を皮切りに参院選、知事選など新基地建設への民意が示される選挙が相次ぐ。政府は22年度予算案で、沖縄関係予算を10年ぶりの3000億円割れへと大幅減額するなど、県側に揺さぶりをかけている。

 城間氏は「埋め立て開始3年で土砂投入量が1割以下なら、完工まで何十年かかるのか」と建設に疑問を呈し、実際の工事は進んでいないと強調。「こんな姑息こそくなやり方をされても、基地や戦争に反対する県民は諦めない」と語った。

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